鬱病を発症した話 スピンオフ➅「番外編」

僕の鬱日記

鬱病を発症した話 スピンオフ➅

 どもども。お読み頂きありがとうございます。今回は、「番外編」ということで、以前から投稿している鬱病を発症した話のスピンオフ作品の六回目。今回のお話は、スピンオフ作品の五回目の続きになります。作品の投稿順にリンクを並べていますので、お読み頂くと話が繋がるかと思います。ぜひ確認してみてください!

鬱病を発症した話

第一話「新社会人へ踏み出す編」

第二話「本配属編」

第三話「上司との出会い編」

第四話「環境に必死に喰らいつく編」

スピンオフ➀「番外編」

第五話「眠れぬ森のおじさん編」

第六話「続 眠れぬ森のおじさん:眠れるキスを求めて」

第七話「鏡に映った鬱の僕」

スピンオフ➁「番外編」

スピンオフ➂「番外編」

スピンオフ➃「番外編」

スピンオフ➄「番外編」

救いの手

 相談を終え、上司への帰宅報告も終え、今日も一日乗り切った。そう思いながら、駅のホームで立ち尽くす僕。数分後、電車がホームに来るとアナウンスが鳴る。

僕のLINE)「お母さん。今から、会社の最寄り駅出るね。」

実は、僕の体調が悪いということを聞き、わざわざ駆けつけてきてくれることになっていたのである。母に連絡したのは、その週の月曜日の朝だったのにも関わらず、父と母、両親揃って、僕のところまで来てくれることになっていた。仕事などもあっただろうに、急に来てもらって申し訳ない気持ちと救いの手が差し伸べられるという大きな期待に満ちていた。

待ち合わせの駅に着いた時、金曜日の夜ということもあり、人でごった返していた。両親はまだ来てないようだった。

建物の端で立ち尽くしていると、奥の方で見覚えのある集団が歩いてくる。とても楽しそうに、会話をしながら歩いてくる。みんな少し顔が赤くなっていた。おそらく、居酒屋へ飲みに行っていたのだろうか。顔が認識できるまで近づいた時、僕は柱の方に隠れるように、移動した。同期のみんなだった。それは見覚えもあるわけだ。僕の顔は、会社でぐちゃぐちゃになってから変わらないままだったので、みんなに顔を合わせるのも恥ずかしく、咄嗟に隠れてしまった。みんなを眺め、柱の裏で立ち尽くす僕。

僕の心の声)「いいなぁ…」

この気持ちは、単純な羨ましさだけでなく、多少の嫉妬心も混じっていた気がする。僕も同じように笑顔で飲みに行きたいと、なんで僕はこんな状況下にあるのかという気持ちで複雑な心情だった。

再会

同期のみんなが立ち去っていき、数十分が経った頃、また前の方に見覚えのある二人組が歩いていた。顔を見なくても体型だけでわかるこの二人組。そう両親だった。そのとき、また頬を温かいものが流れる感触があった。

僕の心の声)「あれ、あんなに泣いたのに、まだ涙が出るのか…まぁ、いいかっ。」

両親の顔を間近で見たのは、ほとんど一年ぶりだった。まだ、少しだけ残っていた緊張の糸が完全に解け、人が行き交う駅の真ん中で、涙した。父さんが、持っていたハンカチを手渡そうとした時、僕はもう自分のハンカチで頬を拭いていた。

顔を合わせて、軽く久しぶりと挨拶をしたのち、ご飯屋へと向かった。そのとき、涙している僕に両親は話を振ることはなかった。今思うと、両親なりに気を遣ってくれたのだろう。

味を感じる...!

向かった先は、もつ鍋屋だった。かなりの時間、外にいたということもあり、冷え切った体には鍋ということでそこに向かうことになった。店に入り、席に着き、注文を済ませる。数分が経つと父、母、そして僕の手元にビールが運ばれてきた。

父)「乾杯。」

母)「乾杯。」

僕)「ありがとうございます。乾杯。」

ごくっ。

僕の心の中)「かぁぁ〜、キンッキンに冷えてやがる!!悪魔的だ〜!!」

久しぶりにお店で飲む酒。両親揃ってお酒を飲むのは多分初めてじゃないだろうか…。

だからこそ、カイジが地下帝国で初めてビールを飲んだときのような気持ちになりたかった。しかし、そこまで感情が揺れることはなかった…

そして、もつ鍋やら一品料理が運ばれて、気づけばテーブルは隙間という隙間がなくなっていた。3人しかいないのに本当に食べ切れるのだろうか…

そんなことを思いながら、もつを口に運んだとき、ビールをもってしても動かなかった感情がドンッと揺れた気がした。

僕)「おいしいね…。」

当時、数ヶ月の間、色々と体に異変が出ていたのだが、その一つとして、食事をしても味がしないという、味覚障害的なものが生じていたということは以前の投稿でも話していたと思う。だからこそ、外食することも減っていたし、お店でお酒を飲むこともかなり久しぶりになっていたのである。

両親と一緒に鍋をつついただけなのに、今まで味のしなかった食事が色づいたのを感じた。すると、またポロポロと涙が出てきた。

母)「どうしたのっw?」

僕)「いや、これが美味しくてさ。今まで味がしなくてあんまり食事が楽しくなかったんだけど、今日はなんか嬉しくてさ。味がするだけでこんなに幸せになれるんだね。」

もつ鍋屋が閉店時間を迎えるまで、お互いの近況報告をし合い、あっという間に楽しい時間は過ぎていった。しめの雑炊を食べ終わる頃には、お店の中には、スタッフと僕ら家族だけとなっていた。

僕)「ご馳走さまでした。」

両親)「ご馳走さまでした。」

その日の食事は、両親が奢ってくれた。

その日は、社宅に帰る気力も残っていなかったため、両親が泊まることになっているホテルへと同行した。そして、とんでもなく長い一週間と中身の詰まった一日の幕が閉じた。

今も、あの時ベッドの上でおぼろげに聞いていたNHKの番組の内容を覚えている…

締めくくり

 今回はここまで。お読み頂きありがとうございます。

気づけば番外編が六話になっていました…

本編では、会社で体験した主な出来事を書いていたので、意外とその間にも印象に残ってたことがたくさんあるなぁ〜と思いながら、番外編をつらつら書いていたら、六話分も書いちゃっていましたw

まだまだ、番外編も増えていくと思いますが、そろそろ本編の方も進めて行けたらいいかなぁーと思います。まぁ〜気長にやっていきます。

 今回、両親と久々に会い食事をすることになった僕ですが、社会人になってから一度も顔を合わせていなかったので、本当に久しぶりに感じました。それも相まって、残り少ない涙が溢れてきたのかもしれません。また、もつ鍋を食べた時のあの感動は未だに、記憶に残っています。今まで味を感じていなかった分、かなり印象的でした。この体験をした今だからこそ、この普段の生活に幸せをしっかりと感じて行きたいと強く思っています。普段の何気ない食事でも、誰かと笑いながら味わって食べる。それだけでとても幸せになることができます。今回の件を通して、違うベクトルで成長できたかと思います。

それが人生全体を良いものにすると信じて、今日も日々を生きていきます。

以上、ここまで読んでくれてありがとう。これが、あなたの特別な時間になってもらえたら嬉しい。それでは、また!

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